読書記録:江戸の天文学者 星空を翔ける(中村士 著)
江戸の天文学者 星空を翔ける ~‐幕府天文方、渋川春海から伊能忠敬まで‐ (知りたい!サイエンス)
- 作者:中村 士
- 発売日: 2008/06/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
江戸時代に活躍した天文学者の人物伝。
文字が大きくて読みやすい。
著者について
著者の中村氏は天文学者であり、最新の望遠鏡を用いた科学的研究に加えて、江戸時代の日本の天文学に関する研究も行っている。本書では、著者の研究・調査の成果を、一般向けに解説している。
本書は、当時の日本と交流があったオランダの資料も踏まえて、江戸時代の天文にまつわる日蘭交流の人物像を描き出している。
口絵
巻頭に、カラー口絵が載っている。
口絵で印象的なのは、オランダのロウマン氏による日本の望遠鏡コレクションの写真。江戸の望遠鏡は、同時代の西洋の望遠鏡に比べて光学面では稚拙であるものの、牡丹唐草の模様が美しいことからコレクターに人気があるらしい。
まえがき
フランスのパリ天文台で日本の江戸期の天文学者「麻田剛立」について研究をして修士論文を書いたフランス人「ジャン」が出てくる。世界には、変わったことに興味をもつ人がいるのだなと思った。
本書の特徴
記述内容は、タイトルどおり江戸時代に絞って書いてある。室町以前の天文学、また明治以降についてはあまり書いていない。
類書と比べたときの特徴は、暦の仕組み以外に、江戸時代の観測機器の構造を図板入で解説しているところである。
人物伝が豊富。詳しく知りたい人は、参考文献リストに研究書が沢山あげてあるので読めばいいのだと思う。
紹介されている天文観測装置
六分儀、八分儀
望遠鏡
- 測量(測地)をする器械。
江戸期の天文学者の本職
当時の天文学者は必ずしも専業というわけでもなく、他の仕事をしていることも多かった。
渋川春海は江戸幕府の碁打ちであった。
麻田剛立は医者として生計をたてた。
伊能忠敬は50歳までは商人で、隠居後に測量の研究を始めた。
朝野北水は戯作者。小説家。
松崎慊堂は儒学者だった。
このように、色々な職業で生計をたてつつ、天文・暦学や測量に取り組んだ人々がいたことがわかる。
おすすめの読者
江戸時代の天文学者・蘭学者たちの活動に興味がある人。
江戸時代の天文観測装置の歴史に興味がある人。
まとめ
江戸時代の天文愛好家が、西洋の天文学を学習したり、独自の工夫を行っていったようすがわかった。
暦学だけではなく、観測装置(象限儀、望遠鏡)の歴史について詳しく書いてあった。