読書記録:フェルマーの最終定理(サイモン・シン 著)
- 作者:サイモン・シン
- 発売日: 2016/12/23
- メディア: Kindle版
著者について
著者は、サイモン・シン氏。 元は英国で出版された本であり、2000年頃に日本語に翻訳された。 文庫版が出たのは2006年となっている。
フェルマーの最終定理とは
フェルマーの最終定理とは、中学校の数学で学ぶ「ピュタゴラスの定理」を拡張したものである。
ピュタゴラスの方程式の指数2を、それより大きな数字に変えただけで、整数解を求めるという比較的簡単だった作業が、想像を絶するほど困難なものに変わってしまったのだ。それどころか一七世紀の偉大なフランス人ピエール・ド・フェルマーは、誰にも解が見つけられないのは解が存在しないからだという驚くべき主張をしたのだった。
とりあげられている科学者
本書では多くの数学者が取り上げられている。
問題を書き残したフェルマー氏
問題を解決したワイルズ氏
は当然として、
- ピュタゴラス
- フェルマーと親交があったメルセンヌ神父。
- ソフィー・ジェルマン
- パウル・ヴォルフスケール
- ガロア
- ラッセル
- ゲーデル
- チューリング
- 谷山豊
- 志村五郎
- ジョン・コーツ
- ゲルハルト・フライ
- ケン・リベット
- ニック・カッツ
など、数多くの人物が登場している。
整数論にかかわる内容だけでなく、 ピュタゴラスの音楽に関する研究、フェルマーの確率論に関する研究など、フェルマーの定理自体と深い関係がなくても幅広く数学・数学にかかわる人物を取り上げている。
本書の内容
ワイルズ氏は一度自分が発表した証明に誤りを見つけた。
一年後、証明の改良にチャレンジして見事にフェルマーの最終定理の証明を完成させる。
その流れが多くのEメールのやりとりを引用しながら、緊迫感をもって描写される。
- パズルの問題や、オイラーの解いた問題など、数論とは直接関係ない数学の問題もたくさん書いてある。
印象に残った部分
志村五郎氏が学生時代を振り返って語る言葉。
志村五郎氏は、戦時中に工場で飛行機部品の組み立てをしながら夜に勉強をしたという。 そんな中、なぜ数学を専攻科目に選んだのかという部分が印象に残った。
もちろん勉強すべき科目はたくさんありましたが、数学がいちばん簡単だったのです。数学ならば教科書を読むだけですみますからね。微積分も本で学びました。化学や物理学をやろうとすれば実験設備が必要だったでしょうが、そんなものは身近にはありませんでした。自分に数学の才能があると思ったことはありません。ただ好奇心が強かっただけなのです
感想
電子書籍で600ページぐらいあり、文章の量が多い。
著者は、数学にかかわった人々の人生(特に生死に関係する出来事)を積極的に描こうとしているように思った。
フェルマーは趣味として数学を楽しんでいたが、自分の発見を記録として世間に残そうと思わなかったというのがおもしろかった。
フェルマー自身は「フェルマーの最終定理」を出版する気がなく、フェルマーの息子のクレマン・サミュエル氏が5年間をかけて父親の研究メモを整理し、出版した。
書物が時代を超えて残るには、いろいろな偶然が重なっているものだ。
フェルマーの最終定理はたまたま運良く世に知られるようになったが、知られずに埋もれていった新発見もたくさんあったことだろう。と思った。
おすすめの読者
フェルマーの最終定理にかかわった、たくさんの数学者の伝記や人生に興味がある人。
数学的な説明が突っ込んでしてあるわけではないので、数学自体を勉強したい人にはそれほど向いてない本ではあろう。と思う。
まとめ
フェルマーの最終定理の発見と証明にかかわった数学者たちを取り上げた本。
数論に限らず、いろいろな数学者の伝記が書いてある。
古代ギリシアから現代までの数論的知識が、偶然に助けられつつ現代まで受け継がれ発展してきたようすに感動しました。