amarillon のブログ

宇宙科学や語学に関する本の紹介をしています。

読書記録:見えない絶景 深海底巨大地形(藤岡換太郎 著)

著者は、地球科学研究者

著者は、日本の深海探査艇「しんかい6500」に何十回も乗船している。

また、ブルーバックスで地球科学の本を何冊か出されている。

大まかにいって、水深200mより深いところを深海というらしい。

地球の海は、ほとんどが深海ということになる。

深海の広さ

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これまで世界各国の潜水艇・調査船が1万回以上の深海探査をしてきたが、

海洋の表面積は約5億km2もあります。1回の潜航でカバーできる範囲はせいぜい1km2ですから、深海のすべてを調査するには5億回は潜らなければならないわけです。

本書の構成

第一章

仮想的な深海探査船「ヴァーチャル・ブルー」号にのって、日本から出発して東に向かう。

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読者が「仮想的な旅行」をするという設定になっている。

日本の三陸沖の深海探査中で、マネキンの首を見つけたときの「絶叫体験」が面白かった。

第二章

深海底の謎を科学的に解く。

深海には、地上では考えられないぐらいの大きさの構造(山や谷)が存在している。

なぜ深海底の地形はこんなにも巨大なのか?

第三章

太陽系・惑星の起源から、地球の形成、そして深海底の地形の起源の謎を解き明かしていく。

深海の謎

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  • ホットスポット

  • 深海大平原

  • 断裂帯というのがある。大きな崖。

  • マンガン団塊(深海の鉱物資源)

などなど、深海には探査がまだまだ進んでいない構造がたくさんある。

  • メガムリオン(海底の畝状の構造)の重力測定のところは、調査艇の中で測定中に息を殺すらしい。緊迫感が伝わってきた。

南海トラフについて

  • いずれ起きると考えられている大地震との関係で、多くの日本人が気になっているであろう南海トラフについても書いてある。

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南海トラフは、じつは研究するのが非常に難しい海溝でもあるのです。それは、黒潮のせいです。東シナ海から太平洋へと・・・流れる黒潮は、最大速度が約4ノット・・・というかなり強い海流です。潜水調査船は最大でも2.7ノットしか出せないので、黒潮の中では潜航調査は困難です。・・・

  • しかし、2005年の地球深部探査船「ちきゅう」が投入されたことによって南海トラフの研究が進められるようになったという。

感想

  • 飲食店などのインテリアとして、「海底地形まで書き込んだ地球儀」を見たことがあった。この形の理由に迫れた気がした。

  • ドラえもんで海底探検をする映画を思い出した。

  • 海底探査船に乗り込み、水深数千メートルの暗黒の海底を探査した経験をもつ著者。その著者の経験には、それこそ海のような「深さ」を感じた。

おすすめの読者

  • 海底地形に興味がある人。

  • 海底の火山活動や、ハワイ・チリなどの地学に興味がある人。

まとめ

  • 深海の地形の現状と起源を解説。

  • 山・谷といった海底地形の話がメインなので、深海生物の話は(カニの話などはあるが)それほど多くない。

  • 著者が深海調査艇に乗ったときの体験談も豊富に含まれており面白い。