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読書記録:スマホ時代の6か国語学習法!(舛添要一著)

スマホ時代の6か国語学習法!

スマホ時代の6か国語学習法!

  • 作者:舛添要一
  • 発売日: 2020/01/01
  • メディア: 単行本

著者の舛添氏は、国際政治学者としてメディアで活動したあと、東京都知事も務めた。

研究・留学・趣味に関連して欧州6か国語を習得してきた舛添氏は、1997年に、「6カ国語勉強法」という本を出版した。しかしこの本は絶版になってしまった。

そのためオリンピックイヤーとなる2020年に、本書を書いた。出版日は2020年1月1日。

ただし、以前に出した本の改訂版ではない。技術進歩のため、前に出した本とは「まったく違う本を書かざるをえなくなった」(著者あとがき)という。

本書は、スマホが普及した現在、語学学習者はどういうふうに勉強していったらいいのか?について、著者の体験をもとに考える本となっている。

6か国語とは

著者が習得した6か国語とは英仏独、ロシア、イタリア、スペイン。の6ヶ国語。

  • 英語・・・中学高校から学び始める。

  • 仏独・・・大学入学時に第2・第3外国語として選択した。

  • ロシア語・・・ロシア小説が好きだったので高校生から興味があった。大学で専門分野の勉強のかたわら先生について 学んだ。

  • スペイン語:大学のときにアルゼンチン人の先生について勉強した。

  • イタリア語:スイスに滞在したときに勉強した。

その他、著者はアジアの言語にもチャレンジした。たとえば韓国・朝鮮語などに力を入れて勉強した。 ただし、それらアジアの言語は、書名の「6か国語」の中には入っていない。

本の構成

本書の前半は、著者が欧州に留学して語学力を磨き、研究者として活躍する話である。著者の自伝としても読むことができる。

後半では、「10の原則」「注意すべき10の落とし穴」という項目に分けて、外国語の習得法を解説している。

語学を学ぶ動機とは?

  • 国際政治学者として、情報収集のため・外国で講演をするために語学を使う。

  • いわゆる「芸は身を助ける」という動機。例として、舛添氏は大学教員であったとき、大学内部での争いに関わって大学(職場)を辞職した。その際に、舛添氏はフランス語ができたため「フランス語の翻訳や通訳をすれば生活できるだけの稼ぎはあるだろう」と考えることができ、辞職に踏み切ることができたのだという。

  • 料理のメニューが原文で読め、ワインに貼ってあるラベルの情報もすぐに理解できることから楽しみが増える。演劇も原文で理解でき、楽しく鑑賞できる。

など。

著者の語学学習方法とは?

数多くのエピソードが紹介されているが、印象に残った点。

  • ローデシアの中学生とペンパルになり、手紙をやりとり(文通)をした。

  • 中学校では、先生が考案した「最初から問題文が発表してある100-200問の和文英訳問題」をしっかりと暗記することにより、英語を効率的に習得することができた。

  • 原語・日本語の対訳本を活用して勉強すると、語学力と教養の双方を身につけることができるので勧められている。例として、著者はシェイクスピアの文章が好きで暗誦した。

  • 1980年にドイツ・ミュンヘンのラジオ局の調査部門に所属した。ソ連や東欧の動向調査をする部門だったが、10ヶ国語前後を使いこなす語学の達人が多い部門だった。会議は英語、生活はドイツ語、資料はロシア語、という生活だった。

    今考えると、「地獄の語学訓練」だったようです

と振り返っている。↓の引用部分は、日本人が語学の勉強をするときの心構えとして役立つかもしれない。

あるルーマニア人の同僚は、・・・スラブ系に加えてフランス語、イタリア語、スペイン語などができて20か国語を使っていました。考えてみれば、同じヨーロッパの言語ですから幾つもできるのはさほど驚くことではなく、私もヨーロッパ人なら挑戦していたと思います。しかし、日本語という文字も文法も全く異なる言語体系を身につけた者が、欧州言語を学ぶのは5つくらいが限度のような気がします。

  • アメリカに滞在したときの記述もある。首都ワシントン市に滞在中に、レーガン大統領狙撃事件の現場近くに居合わせたときの体験が書かれている。

語学習得の原則

著者は自身の経験から「語学習得の原則」「語学習得の落とし穴」として、 それぞれ10個の項目を挙げる。項目名は amazon 等の試し読みでも目次から見ることができるが、

  • 日本人教師の原則。

  • 発音と作文はネイティブの原則

  • ミニテストをやったほうが良い(活用を覚えたりするため)という原則

  • 集中の原則(最初に覚えるときは土台作りを集中的に勉強する。毎日長時間ではなく、かといって1週間に1度などではなく、毎日1時間ぐらい勉強する。)

  • 単語は書いて覚える。

  • 辞書をしっかりと読む。

等。

そして、語学習得の落とし穴として、

  • 教科書をきちんと読まないのはいけない。

  • 大人になってから語学を勉強しても身につかない という思い込みをしてはいけない。

などのアドバイスが書かれる。

スマホ時代の学習方法

では、「スマホ」という便利な機械が身近となった現在どのように語学習得に役立てるのか?ということだが、

  • NHKのニュースアプリでラジオを聞く。

  • 正しい発音を学べるアプリを探す。

等の方法を解説している。

  • おすすめのニュース放送局(米国ならCBS ABC NBC CNN・・・フランスなら TF1、France2、・・・)

  • ツイッターを活用した学習法

も、紹介されている。著者自身のツイッターの活用法も書かれている。

まとめ

  • 「目・耳・口・手、全身を使って語学を習得しよう」等の、基本ではあるが、大事なことを改めて教えてくれる本。

  • タイトルにはスマホ時代とある。スマホのおすすめアプリも紹介している。

  • 本の前半部分は著者の学修・留学体験記を語学習得という観点で切り取って記している。著者自伝としても読める。

  • 半世紀前の(とても優秀な)若者は、どのようにして語学を習得していったのか?の体験談として読める。

  • 現代の自分たちの体験と比べることができて楽しい。

おすすめの読者

  • ヨーロッパ諸言語を学ぶ動機を求めている人。本書では、著者の専門分野を反映して、仏・独語の話が多めに書かれている。

  • 語学に加えて、世界史・地理に興味がある読者は、より興味深く読めるでしょう。