amarillon のブログ

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読書記録:仮想通貨3.0

仮想通貨3.0

仮想通貨3.0

出版:2019年5月

著者のカルプレス氏は、一時ビットコインの世界最大の取引所だったマウントゴックスの運営者です。マウントゴックスは、2014年にハッキングされて話題になりました。このハッキング事件は、一般の人々がビットコインに関心をもつきっかけになりました。(ちなみに当時の自分はニュースを見ても仮想通貨には特に興味をもたず、世の中にはいろんなことを考える人がいるなと思ってました。カルプレス氏のこともニュースで見て、変わった外人さんだなと思ってました笑。)

その後、彼は「私電磁的記録不正作出・同供用及び業務上横領」という疑いで捕まり、裁判をしていましたが、2019年3月に裁判の結果が出たということです。判決は有罪でしたが、著者は「事実上の無罪判決」と言っています。

この本では、カルプレス氏がこれまでの自分の仮想通貨との関わりを振り返り、ビットコインを中心とした仮想通貨関連の現状の問題点をまとめています。また、現在、彼がおこなっているサーバー・クラウド事業について紹介しています。

著者について

著者のカルプレス氏はフランス人で、高校を卒業した後、フランスでコンピュータ会社に就職。幽遊白書のゲームをやり始めた事をきっかけに、日本のアニメ・漫画の文化に興味をもつようになった。日本で働く機会を得て、2009年に来日。

ペルー在住のお客さんから、ビットコイン決済に対応しているかを聞かれたことから、ビットコインに興味をもつ。マイニングにも参加した。2011年にマカレブ氏からマウントゴックスを譲り受け、世界最大のビットコイン取引所とした。その後、2014年にハッキングを受け破綻した。

裁判については、有罪判決ではあったものの事実上の勝利であるとしている。また、検察が控訴しなかったため、日本の検察は健全であると評価をしている。

ビットコインの評価について

カルプレス氏は、ビットコインが将来にわたって残っていってほしいと言いつつ、全体的にはビットコインの未来に関して悲観的な論調が多い。

ビットコイン決済については、価格が大きく変動し、送金手数料が高く、税制がややこしいため、 現状ではビットコイン決済のメリットはないとしている。

ビットコインには中央管理者がいないので、新しい技術(暗号化など)を採用する際にも意見がまとまりにくい。

プルーフ・オブ・ワークの計算のために電力消費量が大きくなっている問題や、多くの人が一度に使えない(スケーラビリティの問題)など。

著者が現在やりたいこと

カルプレス氏は最近、「トリスタンテクノロジーズ」という会社を設立して、サーバー事業を始めた。ファイルシェアリングのサービス。リーガルテック(裁判や企業法務にITを導入する)にも興味をもつ。日本のIT産業の立ち位置は昔とくらべると落ちていることを残念に思っている。新しいOSを開発していきたい。

全体的な感想

本のタイトル・章のタイトルと中身が一致してないことがちょくちょくあると思いました。ビットコインと著者との個人的な関わりが多く書かれていますが、ビットコインをより一般的に見た「ブロックチェーン」の将来の可能性については、それほど書かれていないと思います。著者が仮想通貨から現在は少し離れた事業をしているのも理由かもしれません。

仮想通貨の将来に興味がある人よりも、マウントゴックス事件の当事者である、著者のカルプレス氏はどういう人物か?という事に興味がある人が読むのが良いと思いました。2016年ー2018年におきた仮想通貨関連のニュースをまとめてくれていて、重要な出来事の振り返りをしたい人には便利だと思います。