amarillon のブログ

宇宙科学や語学に関する本の紹介をしています。

読書記録:地学ノススメ ブルーバックス(鎌田浩毅 著)

著者の鎌田氏は、火山の研究者。

講談社ホームページによると、本書は、鎌田氏が

地学の「おもしろいところ」「ためになるところ」だけを一冊に詰め込んだ

本であるという。

地学履修率

現在の日本では、高校で地学を学ぶ高校生は少ない状態である。この理由は、

高校の地学には、二一世紀になってからの研究の最先端が教えられるという特徴があります。

しかし、高校で学ぶ数学や化学、生物学などが前世紀以前の成果までしか学ばないのと比べると、高校の地学では「科学研究の最先端」を高校の時点で学ぶことができる、という面白さがあるという。

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本書の内容

地学に関する話を章ごとにまとめる。

  • 地球の形の測定
  • 化石と地質学、
  • 斉一説と激変説
  • 大陸移動、プレートテクトニクス
  • 火山とマグマ
  • 大量絶滅
  • 現在の日本と地震・火山

などといったテーマが、最新の研究情勢も含めてわかりやすく解説されている。

フィールドワークの重要性

著者は、野外に出て地面や岩石を観察する、「フィールドワーク」の重要性を強調している。

「百聞は一見に如かず」という言葉どおり、事実を自分の目で確かめることが、地学では欠かせない手段です。

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また、著者の体験を振り返ってみても、次のようなことが言えるという。

第一章コラムより。

この仕事は私の初めての火山研究で、その年に日本火山学会で発表し、・・・国際学術雑誌に英文で発表しました。・・・この研究で私が一番惹かれたのは「フィールドワーク」でした。・・・山道を歩き、体を動かしていると、頭が活性化し、新たなアイデアがふつふつと湧き上がってくるのを感じました。・・・

コラム

各章のコラムが面白い。

研究を進めていく過程で、驚いたこと・著者地震が野外で研究活動をしている写真が、数多く載っている。

講談社のホームページに、コラムのテーマ一覧が載っている。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000226651

地学専攻と就職

質問「地学で学んだことを生かせる仕事にはどんなものがありますか?」

に対する著者の答え

地学ほどたくさんの就職先がある分野はないと言っても過言ではないでしょう。(後略)

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現在高校生や大学生で、地学を専門に勉強してみようかどうか、考えている学生の方が読むとためになると思う。

最新の研究成果

20世紀の終わりになって現れてきたプルーム・テクトニクス(マントル内での物質の上下方向の運動)に関する最新の解説がある。

岩石が溶ける条件をさぐる実験的研究など、近年では技術の進歩によってさまざまな実験がおこなわれるようになっていることがわかった。

日本周辺の大型地震・火山

地学は、地震・火山といった自然災害を扱う分野でもある。

著者は、富士山噴火と南海トラフ地震に関する一般向けの本も書いている。

地震の発生時期は、

月日までのレベルで正確に予測することは、いまの技術では不可能です。

とはいうものの、大まかな予測はできるらしい。

本書の中でも、

私も、二◯四◯までには次の連動地震が確実に起きると予想しています。

と言っている。

白頭山の噴火

日本国内の火山だけではなく、北朝鮮にある「白頭山」が、もし噴火したらどうなるか、

ということがシミュレーションで説明されている。

白頭山の場合、季節によって、火山灰の飛ぶ方向が違うらしい。

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感想

  • それぞれの内容は、独立して読める。

  • 第五章「マグマのサイエンス」は、岩石の融解条件など、化学的な話があってちょっと難しかった。

  • 馴染みがない場合には理解しづらいかもしれないので、まずは気楽に自分の気に入った章をピックアップして読むとよいと思う。

おすすめの読者

  • 昔、学校のとき地学を勉強したが現在は離れている人。最近の進展を知ることができる。

  • 地学分野に進学を検討している学生。

  • 著者(鎌田氏)の火山学者としての個人的な研究体験も積極的に書いてある。研究者の日常のようなものに興味がある読者にも薦められると思う。

まとめ

  • 中学や高校で習うような地学の内容の、最新の研究成果を込めて説明してくれる本。

  • 著者の個人的な研究体験を写真をまじえて説明してくれるので親しみやすい。

  • 地学を本格的に勉強するかどうか迷っている人におすすめ。