読書記録:外国語学習の科学(白井恭弘 著)
- 作者:白井 恭弘
- 発売日: 2015/10/15
- メディア: Kindle版
本書は、2008年に出版された。
著者について
著者の白井氏は、 大学卒業後、高校の英語教員になり、現在は米国の大学教員として第二言語習得論を研究している。という方。
第二言語とは
本書では、第二言語習得論を扱っている。
第二言語とは、母国語の次に学習する言語のことをいう。
たとえば、多くの日本人であれば「日本語」が母国語となり、学校で最初に勉強する「英語」が第二言語となる。
- いっぽう、大学等で学習することがある仏語・中国語などは「第二外国語」と呼ばれる。
本書の構成
第五章までは、第二言語の習得の理論。心理学的な実験と、その背景となる言語習得理論の解説がされる。
外国語を勉強している人にとっては、第六章「効果的な外国語学習法」が特にためになると思う。
第六章では、語学学習の具体的なアドバイスとして、
「分野をしぼってインプットする」 「例文暗記」 「アウトプットの仕方」 「コミュニケーション・ストラテジー」
等、外国語学習の方法を教えてくれる。
引用
ここで紹介してあるようなことは、すでに・・・実践している人もいるかもしれませんが、その場合も、研究成果に基づいた理論によってその方法の正しさが裏づけられるという意味で、役に立つのではないかと思います。
たとえば聞き取りの学習法については、
リスニングは、聞いても二◯パーセントしかわからないような教材を聞くより、八◯パーセント以上わかる教材を何度も聞いたほうが効果があります。・・・
などのアドバイスが含まれている。
外国語を習得しやすい人とは?
- 外国語を習得しやすい人と、習得に失敗しやすい人の特徴が解説されている。
外国語の発音のよさを予測する要素についても研究が重ねられています。・・・多くの研究で重要とされているのは、「学習開始年齢」「外国語環境滞在期間」「性別(女性のほうがよい)」「模倣能力」「発音の正確さに関する興味」「どれくらい外国語を使っているか」などです。・・・
- 女性のほうが外国語習得に有利だという話は本書のほかの部分でも出ている。
「女性のほうが語学に向いている」と言われることが多いのですが、実際はどうなのでしょうか。・・・女性の方が成績がよいことを示す研究はいくつかあります。しかし、男性のほうが聞き取れる単語の数で優れている、という研究もあり、両者の差がない、という研究もあります。男性のほうが明らかに優れている、という結論を出したものはないので、「女性のほうが男性よりも外国語学習に向いている」というのはある程度言えるのかもしれません。・・・外国語ではなく母語の言語能力については、女性のほうが男性よりもおおむね優れている、ということは言われています。・・・
- 日本ではみんな学校で英語を勉強するわけだが、米国の事情について。
アメリカでは「外国語学習障害」というものが認められつつあり、他の科目の学習はふつうにできるが外国語だけはだめ、という学生がいることが知られています。筆者の前任校のコーネル大学でも、外国語学習障害と認定されれば、必修の外国語を免除されていました。・・・
という現象がおきているらしい。どのぐらいの基準で「外国語学習障害」が認定されているのだろうか、気になった。
タイトルについて
- 本書のタイトルは著者の提案であるらしい。
- 著者は前著として「外国語学習に成功する人、しない人」という本を出しているが、
実は前著のタイトルとして、「外国語学習の科学」を提案したのですが、ボツになり(おかげで売れ行きは伸びたと思います)、今回、そのタイトルが復活しました。
本書のタイトルは確かに硬い印象を与えると思う。
中身を読んでみると難しくないので、気になった人は「科学」という言葉に深く構えずに読んでみてください。
感想
岩波新書なのに、「非常に読みやすい」。岩波新書は硬くて読みにくいというイメージがあるかもしれないがこの本はそうではない。
外国語学習法について、たくさんの比較実験の結果と理論が書いてある。
最後の章の内容は外国語の勉強をするにあたって実践的であり、ためになりそうだ。
おすすめの読者
外国語習得論を手軽に勉強したい人。
「外国語学習に成功・失敗しやすい人の特徴はどのようなものか」を知りたい人。
外国語を勉強している人には第六章がおすすめ。
まとめ
外国語学習・教授の研究の現状をまとめた本。
英語習得の事例を中心に、学習者が心がけたほうがいいことが書いてある。